第1回:リニアワークフローについて<その1>

今回から暫くコラムを書かせていただくことになったフィールドジャムの林田豪元(はやしだひでゆき)と申します。建築系のCG制作をおもな仕事としています。ここでは3ds Maxのテクニックだけではなく、デザインビジュアライゼーションを進める上で、知っておくと便利なことをいろいろな角度から取り上げてみたいと思います。最初は、耳にしたことがあるかもしれませんがリニアワークフローというものについて、数回に分けて取り上げていきます。
ガンマについて
まずは、少し目を細めながら次の画像を見てください。LCDの場合は見る角度によって異なるので、なるべく正対して見ましょう。周囲のグレー部分にもっとも馴染んでいるものが、ディスプレイのガンマ値です(大体です)。ガンマって何?良くわかんないし面倒なんだよねという人、損はさせないので少しの間お付き合いください。

ガンマとは、入力情報と出力情報のバランスのことです。言葉では解りにくいので図が必要ですね。

表示するディスプレイのガンマ値が1.0の場合、このようになります。ガンマ1.0の環境をリニアスペースと呼び、入力された情報はそのまま出力されます。確かに理想的ですが、ありえません。なぜならば通常は次のようになっているからです。

はっきりと暗いんです。ガンマ値を2.2にしたのは、Windows環境のディスプレイは2.2が多いためです。ガンマ値が1.0を超えると、そのカーブが下向きに膨らみます。ディスプレイに限っていえば、必ずこのような変換が行われて表示されます。この場合、最大値と最小値は変わらないけど中間値がぐっと押さえられているので、大きな問題です。

そこで、あらかじめ明るくしたデータをディスプレイに送り込んで、相殺させてリニアスペースで表示するということを行います。こうすると、作成した画像の情報をそのまま表示できることになります。理屈は単純ですが、なんだか、やっぱり面倒ですね。
第2回:建築ビジュアライゼーションとBIM(Building Information Modeling)の関係

ここ数年、建築業界で何かと話題に事欠かないBIM(Building Information Modeling)という考え方(システム)がある。建築ビジュアライゼーションに関わる業務を行っている私とは直接的に関わりがなさそうな印象を持つBIMではあるが、面白い事に最近は私自身がBIM絡みで建築ビジュアライゼーションを語る場面が増えてきている。普段は建築パースやアニメーションを制作する事を主体として仕事をしている者にとって、BIMはあまり関係なさそうだという印象を抱きがちではあるが、いやいや実はビジュアライゼーション関係者も積極的にその潮流に乗って損は無しという思いがある。そこで今回はBIMが建築ビジュアライゼーションにもたらす影響や、逆に建築ビジュアライゼーションはBIMにどういう影響を与える事が出来るのかをお話して見ようと思う。

建築ビジュアライゼーションとBIMの関係を語る前に、まずBIMとは何ぞや?という疑問をお持ちの方もいると思うが、ここでBIMの解説をしていると文章が足りなくなってしまうほど奥が深いし、簡潔に話して誤解を招く事になってはBIMの普及に努めている方々にお叱りを受けかねないので、ここでは建築ビジュアライゼーション側から見たBIMの捕らえ方という切り口でお話したいと思う。
建築ビジュアライゼーション関係者から見たBIMの最大の特徴は、設計の上流から施工段階、更には竣工後に至るまでその中心に3Dモデルがある事だ。これまでパースやアニメーションを制作する際の多くは2DCAD図面から3Dモデルを起こしていたと思うが、このモデリング作業が曲者で図面の不整合ならまだしも、まだ確定していない図面から制作しなければならなかったりと、レンダリング作業に入る前にモデリングの正否の確認で煩雑なやり取りが発生していたし、更には締め切り間際の設計変更などもありレンダリング作業に大きな負担になっていた。

これがBIMによって設計側から確定に近いモデルを入手できるようになればこれは大きな変化だ。誤解を恐れずに書けばモデリング作業の煩雑なやり取りから開放されて絵作りに没頭でき、成果品のクオリティを1ランクも2ランクも上げる事が可能になる。これは設計者にも言えることで、これまではパースを制作するためにはモデリング→レンダリングの2工程のチェックをしなければならなかったが、レンダリング部分の表現のチェックだけに集中できるようになる。更には設計の早い段階から3Dモデルが存在する事により、これまではあまりビジュアライゼーションを活用していなかった(出来なかった)企画・計画レベルや施工段階での制作量が増大する可能性が高い。それはパースやアニメーションといった従来の制作物だけでなくリアルタイムレンダリングの制作をも普及させるポテンシャルがある。

ここまで読んで来てBIMの動向もチェックしているCGデザイナーやCGプロダクションの経営者からは「本当に仕事量が増えて上手くいくの?」という声が聞こえて来そうだ。その疑問の理由はBIMの導入効果の1つとしてコスト削減が謳われていて、Revitなどはフル機能ではないにしても簡便にメンタルレイが使用できるため設計者がパース制作を行えるようになり、それによってCGの外注費の削減に繋がっている等のメディアからの情報をキャッチしているからだと思う。
これらの情報に嘘は無いだろうと私は思っているが、建築業界全般の話にまではなっていないと考えている。確かに中小の設計事務所やゼネコンでは大きな会社に比べて社員数も非常にコンパクトだしコストの締め付けもより厳しいため可能な限り内作を勧めるのは道理で、BIMによってコスト削減できることは積極的に推進する事は間違いないからだ。ただこれは中小規模の会社に見られる例で、建築ビジュアライゼーション業務の発注総量から見た場合の割合は少ないだろう。